オーケストラでは、弦楽器奏者が2人1組で1つの譜面台を共有するのが一般的です。
このコンビの単位は「プルト」と呼ばれています。
実はこの「プルト」、ただの座席の並びではなく、どこに座るかによって意識すべきことや担う役割が変わってくるのです。
今回は、そんな「プルト」について、弦楽器奏者ならではの視点からご紹介します。

プルトの決め方についてもご紹介します
プルトごとのポイント
どのプルトになるかで、パート内で意識すべきことや役割が違います。


「第九」の舞台全体配置図をこちらの記事で作ったよ
① 1プルト(トップ)
指揮者に一番近い最前列のプルト
どの弦楽器も1プルトには「トップ」と呼ばれる主席奏者(1st ヴァイオリンではコンサートマスター)が座ります。
同じプルトに座る団員は「トップサイド」と呼ばれ、トップをサポートする役割です。
- パートのリーダーシップを取る
- 指揮者の指示をパートに伝える
- ソロパートを担当する
- 技術的にパートを引っ張る
- ボーイングやdiv. など奏法の最終決定をする
➁ 中盤のプルト
「中間管理職」的なプルト
中盤のプルトは、前と後ろの演奏をつなぐ大事な位置です。
- パート全体のの一体感を作る
- 前方と後方の両方に意識を向ける
- パート内で演奏にズレが起こらないようにキープする
③ 後列のプルト
指揮者から一番遠いポジション。目立つことは少ないですが、音の厚みや広がりに貢献しています。
- 1プルトとの距離があるぶん、ズレに注意
- 周囲の音に頼らず、しっかり拍に乗って演奏する意識を持つ
- 見られている意識も大切(ひな壇に乗ることも多い)
- 指揮者が見えにくいこともあるので工夫が必要
指揮者から一番遠いプルト
目立つことは少ないですが、音の厚みや広がりに貢献しています。
- 1プルトとの距離があるぶん、ズレに注意
- 周囲の音に頼らず、しっかりON TIMEで演奏する
- 見られている意識も大切(ひな壇に乗ることも多い)
- 指揮者が見えにくいこともあるので工夫が必要
- バイオリンリレーの終着点

バイオリンリレーについてはこちらの記事で紹介中
④ 折り返しのプルト
目の前が他パートになるプルト
例えば1stヴァイオリンやチェロが横一列に並びきれないとき、後列が内側に折り返して座ることがあります。
- 他のパートの背後に座る
- 目の前プルトの演奏に惑わされない
- 前のプルトから指示が伝わりにくいため、常に指揮者やトップを意識して見る
⑤ 他パートとの境目のプルト
横の席が他のパートになるプルト
弦同士だけでなく、木管やハープ、ピアノとの境目になることもあります。
- 横や後ろの演奏に惑わされないようにする
- 他パートとのアンサンブルを楽しめる
- 他パートとの空間的な距離感にも気を配る
➅ ひな壇に乗るプルト
ステージでひな壇上に配置される後列のプルト
- 練習と本番でと見え方・聴こえ方が変わることに注意
- 足元の段差に注意
- 指揮者やトップは見やすい

自分の音だけ浮いちゃう感覚がする
プルトの決め方
① 実力・経験順
- 上手な人を前に、初心者を後ろに配置
- 合奏の精度を上げやすく、後ろの人も前から学べる
- コンサートマスター(1stトップ)は、最も経験豊富で人柄の優れた人が担当するのが通例
- 経験の長い人と浅い人を同じプルトにする
※後列になる人のモチベーションに影響が出ることもあるので注意
② 出席率重視
- たくさん練習に来られる人を前に配置
- 合奏の指示が確実に伝わるようにするため
- 上手くても欠席が多い人は後ろになる場合も
- トップや2プルトは「固定で出られる人」が優先される傾向
※休みがちな後方プルトのケア(練習内容の共有など)が必要
③ 交代制
- 特定の順番を決めて、毎回の練習や曲ごとにプルトを交代
- いろんなプルトを経験でき理解が深まる
※演奏のパワーバランスが崩れる恐れがある
④ 完全ランダム(くじ引き、シャッフル)
- 一日限りのオケ(一発オケ)でよく使われる
- 「気軽に参加できる」雰囲気を作ることが目的
- トップはランダムではなく固定のことが多い
※演奏の質を最重視しない場面向き
⑤ パートリーダーが任意に決定
- パートリーダーがメンバーの性格・実力・相性や音のバランスを見て配置

ほとんどのオケが ⑤ じゃないかな?
まとめ
「プルト」はただの座席番号ではなく、それぞれ特徴や持つべき意識に違いがあります。
複数で同じ譜面を弾く弦楽器パートは、演奏技術だけでなく周囲とのコミュニケーション力や観察力も求められます。
自分のプルトを理解して、アンサンブルの一員として音楽作りを楽しみましょう!