どんなにコンディションを整えても、演奏中に弦が切れる、楽器が壊れる…そんなトラブルは起こり得ます。
オーケストラの「危機管理力」や「対応力」が問われる場面です。
この記事では、そんな場面で頼りになる「予備楽器」の考え方と、その運用方法をまとめました。
予備楽器の準備がないオケにも、きっと参考になるはずです!

メリット、デメリットをまとめたよ
予備楽器ってなに?
予備楽器とは、本番中のトラブルに備えて用意される替えの楽器のこと。
予備楽器を用意しているかどうかはオーケストラによって異なりますが、あるほうが珍しいです。

あるのは、20 団体中で1 団体くらいかな
なぜ用意するの?
弦楽器では、演奏中に弦が切れるアクシデントが起こることがあります。
弦が切れた場合は、奏者同士が楽器を素早く受け渡す「バイオリンリレー」で対応するのが一般的です。
その際は、一人の奏者が演奏を中断し、舞台袖で弦を張り直す必要がありますが、舞台上に予備楽器があればその場で交換し、すぐに演奏に戻ることができます。

「バイオリンリレー」につていはこちらで詳しく
誰の楽器?
- 団所有の楽器
- 団員のサブ楽器
本番で使える状態にメンテナンス、チューニングされている必要があります。
ヴァイオリン協奏曲の場合、ソリストが自身のサブ楽器を傍らにスタンバイさせることもあります。
どこに置いてある?
多くの場合、予備楽器は一番後ろのプルトの近くにそっと置かれています。
椅子に横たえていることもあれば、スタンドに立てていることもあります。

存在に気付かないお客様も多いよ
予備楽器のメリット
- 最小限のロスで済む:
舞台上で楽器を交換できるため、労力や時間のロスが最小限で済みます。
(弦の張り替えのために舞台袖に下がる必要がありません) - 演奏が継続できる:
弦の張り替えのために、奏者が舞台を出入りする必要がありません。
出入りがないため、プログラム中にイレギュラーな間を取る必要もありません。 - 安心感がある:
予備楽器があることで安心感が生まれ、パフォーマンスに集中しやすくなります。
予備楽器のデメリット
- スペースが必要:
予備楽器を舞台上に置く場合、椅子1脚または楽器スタンド分のスペースが必要になります。
舞台がコンパクトな場合は、椅子1脚でも確保が難しかったり、他の楽器の配置までに影響が及んだりします。
舞台上に置けない場合は、舞台袖にスタンバイさせても良いでしょう。 - 管理が必要:
弾ける状態にメンテナンスしておく必要があります。
予備楽器1本分の手荷物が増えます。 - コストがかかる:
予備楽器として貸し出すためにメンテナンス費用が掛かることもあります。
持ち主の善意に頼らず、演奏会費から出すことも考えましょう。
予備楽器の運用方法
- 舞台上にスペースを確保できるか確認する。
➢ 椅子置きか?スタンド置きか? - 予備楽器として貸し出可能な楽器を探す。
➢ できるだけ状態の良い楽器を - チューニングを済ませて、開演前に舞台にセッティングする。
- 終演後に回収する。
チェロやコントラバスなどの低弦楽器は、スペースや運搬コストの問題から、予備楽器が用意されることはほとんどありません。
まとめ
予備楽器を実際に使う「万が一」の場面は、めったにありません。
でも、「万が一にも困らない」安心感は、奏者の精神的なゆとりにもつながります。
導入していない団体も、できるところから検討してみてはいかがでしょうか?
ちなみに、人気ヴァイオリニストのRay Chen(レイ・チェン)も、本番中に弦が切れるアクシデントに見舞われたことがあります。
そのとき、どう対応したか気になる方は、こちらの記事もぜひご覧ください!